メラトニンはサプリで摂るのはNG

メラトニンは糖尿病のインスリンと同じように、体内で合成できるホルモンです。したがって、子供のときからメラトニンのサプリメントを飲んでいると、からだは努力をしなくても常にメラトニンが豊富にある状態で、つくることを忘れてしまいます。

とくに幼児期は、もともとからだでどんどんメラトニンが合成されているので、たとえ睡眠障害でも、絶対にサプリメントは禁止です。視床下部には性の中枢という部分があり、そこから卵巣や精巣などの生殖器官の発達を促す性腺刺激ホルモンを分泌しています。メラトニンが松果体から分泌されると、視床下部にある性の中枢に働きかけることで性腺刺激ホルモンの分泌を抑制して、成長ホルモンを分泌させています。

思春期になるとメラトニンが減少するわけですが、今度は、性腺刺激ホルモンがたくさん分泌されはじめ、男女の成熟がはじまるわけやこのような大切な時期にサプリメント与えると、からだが成熟に混乱きたしてしまいます。

いわゆる、妊婦中もそうですが生殖に関係する時期にメラトニンと問題が起きる可能性があります。

もっとも、すべての人がサプリメントを飲んではいけないといありません。国際線のパイロットや乗務員、海外に頻繁に行くビジネスマンは、時差ボケ修正のために一時的にサプリメントを飲んで、体を現地時間に合わせる必要があります。

また、高齢者はメラトニンの分泌が少ないので、補う必要があります。しかし、メラトニンは日本では販売されていませんので、服用の場合は、医師に処方してもらわなければなりません。できれば、60歳代まではなるべくサプリメントに頼らずに、自然睡眠方法を考えたほうが健康のためにもなるでしょう。
そこで、リズム運動を日ごろからすることによって、セロトニンが分泌されますし、成人病の予防にもつながりますので一石二鳥というわけです。

メラトニンは加齢により減少する

メラトニンの分泌量は17歳から18歳くらいを境にして急激に減少するのですが、高齢になればなるほど分泌量は少なくなっていきます。もちろん、まったくメラトニンが分泌されなくなるというわけではなく、死ぬまでメラトニンは分泌されますが、睡眠を長く維持するだけの分量は分泌されなくなります。年をとることで眠れなくなる原因の大きな要因です
今年で80歳になる女優の森光子さんは外見は20歳くらい若く見えるのですが、75歳くらいから健康維持と芝居のために毎日スクワットを150回しているといいます。メラトニンが不足している年齢になり、スクワットをすることでセロトニンがたくさん蓄えられ、結果的にメラトニンの分泌が多くなります。
これは、よく眠れるだけでなく、アンチエイジングにもつながりますので、高齢になればなるほど運動が大切だということがよくわかります。

メラトニンを活性化させる運動

  • ウォーキング
    あごをやや引いて、顔を上を向いて目はやや遠くを見ます。背中、腰を伸ばし、姿勢をよくし、からだ全体でリズムをとるような感じで、軽快に歩きます。
  • 水泳
    泳げない場合は、水のなかを歩くだけ
    でも効果があります。通常のウォーキングより水中の方がからだに負担をかけずに筋力をつけることができます。

  • スクワット
    手軽に行なえる運動の1つ。両足を肩幅程度に開き、ももとおしりを上下させます七ももが床と平行になるまで曲げるのが理想です。

ガムをかむリズム運動がセロトニン神経を活性化させる

大リーグーの試合をTVで見ていると、多くの選手がガムをかんだり、ひまわりの種を食べてベンチに殻をはきだしているのを見かけます。試合中にガムをかむという行為は、日本人にはやや不謹慎にうつりますが、たくさんの観客のなかで集中力を発揮するために必要な行為だったのです。

さらに、からだに石と同じくらいに固いボールがあたっても一瞬だけ痛がるそぶりをするだけで、なにごともなかったようにバッターボックスに立ちます。

一般人が野球のボールを太股に受けたら、恐らく1週間くらい痛くて歩けないかもしれません。野球選手は、格闘技の選手のように打たれる訓練をしていないのに、なぜ痛くないのかと思います。それには理由がありました。セロトニン神経が鍛えられていて、痛みを伝える経路が抑えられていたのです。

セロトニン神経と痛みの伝達神経について、麻酔科医を中心に、ガムを30分かみ続けているとき、痛さを感じる刺激を断続的に与えたらどうなるかという実験を行っています。

まず最初に、ガムをかんでセロトニンの血中濃度を測ってみたところ、確実に増加していました。それは、セロトニン神経がガムをかむというリズム運動で活性化され、脳血管に入って全身に運ばれたからだと考えられます。

つぎに、ガムをかみながら痛さの刺激を与えるのですが、場所は咀嚼運動とはまったく関係ない、足のくるぶしの後ろにしました。そうしたところ、ガムをかんでいないときは痛さを感じたのですが、ガムをかんでいるときは、痛みをあまり感じませんでした。セロトニン神経は痛みを和らげる働きもありますが、それがガムをかむことで引き起こされたのです。
選手がこの事実関係を認識しているかはわかりませんが、咀嚼運動を試合中に行なうことで、セロトニン神経の活性化を実践していたわけです。

実際にスポーツの現場でセロトニン神経を活性化させることを利用して、成績アップにつなげています。であれば、私たちも集中して仕事や勉強を短時間のうちに処理しなければならないときに、セロトニン神経を活性化させてあげれば能率はかなりアップするはずです。こんなに簡単なリズム運動で能率が上がるわけですから、試してみる価値はあるでしょう。ただし、勤務中や会議などでガムをかんでいると「不謹慎だ」といって上司に叱られることもありますので、くれぐれもTPOをわきまえてください。

  1. あごを一定のリズムで動かすことによってセロトニンが脳内に分泌されて、不安や緊張を緩和する。
  2. リズム運動により脳が活性化されて集中力がアップする。
  3. 脳内の情報伝達神経のセロトニンが活性化され、痛みを伝達する経路が抑制される。

野球選手がガムをかむのは、上記のような3つの理由があり、結果的に成績のアップにつながります。私たちの生活のなかでもTPOをわきまえながら試してみるといいでしょう。