大リーグーの試合をTVで見ていると、多くの選手がガムをかんだり、ひまわりの種を食べてベンチに殻をはきだしているのを見かけます。試合中にガムをかむという行為は、日本人にはやや不謹慎にうつりますが、たくさんの観客のなかで集中力を発揮するために必要な行為だったのです。
さらに、からだに石と同じくらいに固いボールがあたっても一瞬だけ痛がるそぶりをするだけで、なにごともなかったようにバッターボックスに立ちます。
一般人が野球のボールを太股に受けたら、恐らく1週間くらい痛くて歩けないかもしれません。野球選手は、格闘技の選手のように打たれる訓練をしていないのに、なぜ痛くないのかと思います。それには理由がありました。セロトニン神経が鍛えられていて、痛みを伝える経路が抑えられていたのです。
セロトニン神経と痛みの伝達神経について、麻酔科医を中心に、ガムを30分かみ続けているとき、痛さを感じる刺激を断続的に与えたらどうなるかという実験を行っています。
まず最初に、ガムをかんでセロトニンの血中濃度を測ってみたところ、確実に増加していました。それは、セロトニン神経がガムをかむというリズム運動で活性化され、脳血管に入って全身に運ばれたからだと考えられます。
つぎに、ガムをかみながら痛さの刺激を与えるのですが、場所は咀嚼運動とはまったく関係ない、足のくるぶしの後ろにしました。そうしたところ、ガムをかんでいないときは痛さを感じたのですが、ガムをかんでいるときは、痛みをあまり感じませんでした。セロトニン神経は痛みを和らげる働きもありますが、それがガムをかむことで引き起こされたのです。
選手がこの事実関係を認識しているかはわかりませんが、咀嚼運動を試合中に行なうことで、セロトニン神経の活性化を実践していたわけです。
実際にスポーツの現場でセロトニン神経を活性化させることを利用して、成績アップにつなげています。であれば、私たちも集中して仕事や勉強を短時間のうちに処理しなければならないときに、セロトニン神経を活性化させてあげれば能率はかなりアップするはずです。こんなに簡単なリズム運動で能率が上がるわけですから、試してみる価値はあるでしょう。ただし、勤務中や会議などでガムをかんでいると「不謹慎だ」といって上司に叱られることもありますので、くれぐれもTPOをわきまえてください。
- あごを一定のリズムで動かすことによってセロトニンが脳内に分泌されて、不安や緊張を緩和する。
- リズム運動により脳が活性化されて集中力がアップする。
- 脳内の情報伝達神経のセロトニンが活性化され、痛みを伝達する経路が抑制される。
野球選手がガムをかむのは、上記のような3つの理由があり、結果的に成績のアップにつながります。私たちの生活のなかでもTPOをわきまえながら試してみるといいでしょう。