5人に1人が不眠という時代

睡眠効果のあるメラトニン分泌を促すためには、目覚めに太陽の光を浴び、寝る前には照明を暗くするなどが重要なポイントになりますが、規則正しい生活リズムを心がけていても、快眠できない悩みを抱えている人はたくさんいます。とくに不眠症の人の割合は年々高くなっています。

では、不眠症とはどのような状態のことをいうのでしょう。不眠症とは、睡眠時問の長さにかかわらず、快眠・安眠いわゆる熟睡できていない状態が続き、身体や精神に不調が現れることです。「寝つきが悪い」「熟睡できない」などの症状 が慢性化している状態です。

これらの症状が長期にわたる場合は、専門医の治療を受けるのが望ましいでしょう。原因は、身体の不調、環境の変化、精神的ストレスなどさまざまです。これらの原因のなかでもとくに多いのが、精神的ストレスによって起こる不眠症です。

不眠症のタイプ

  • 入眠障害
    寝つきが悪くなかなか眠れない状態。ただし、一度眠りに入ると朝まで眠れる。
  • 中途覚醒
    眠りが浅く、すぐに目が覚めて、そのあともなかなか眠れない状態。
  • 早朝覚醒
    望ましい時刻より2~3時間早く目が覚め、そのまま眠れなくなってしまう状態。
  • 熟眠障害
    睡眠時間が足りていても、眠った気がしない状態。

不眠症と睡眠障害についてはこちら

ただし、こうした睡眠障害や不眠でかなり眠れない日が続いていてもこれまでと生活習慣を変えたり、寝る前に音楽を聞くなどがきっかけで、これまでの不眠が嘘だったかのように眠れるようになる場合もあります。特別な病気でないかぎり、体の緊張がときほぐれれば誰もが眠れるのです。

不眠症から抜け出すためには、不眠を誘発する身体的、または精神的病気の治療が先決です。そのうえで、薬による治療を行なうことになります。不眠は人それぞれ原因やタイプも違うため、薬の摂取については、医師と相談しながら治療を進めていかなければなりません。

最近では安全性が高く、依存性も少ない睡眠薬が多く開発されていますが、いずれにしても生活面での工夫は必要不可欠です。からだや心の状態を客観的に見つめなおし、リラックスして眠りやすい環境をつくるようにしましょう。

何より気をつけたいのは、眠れないことに集中して、逆に不眠にならないことです。不眠を解決するためには、眠りの時間ではなく質を高めることが大切なのです。目覚めが悪いと感じたときこそ、太陽の光を浴び、バランスのよい食事を摂るようにして、体内から分泌されるメラトニンを「天然の睡眠薬」として作用させるよう心がけましょう。

不眠の原因

  1. 身体の不調
    痛みやかゆみ、咳や喘息など、身体的不快によるもの。突然呼吸がしばらく止まってしまう睡眠時無呼吸症候群などもあげられる。原因となる病気を治療することが必要。
  2. 環境変化
    旅行先で時差がある場合に眠れなくなったり、場所や騒音、温度や明るさなど、睡眠環境の変化が原因によるもの。また、交代制勤務などによる生活リズムの変化よって起きる不眠。
  3. 精神的ストレス
    悩みやイライラ、精神的ショック、極度の緊張などからストレスが過剰になることで起こる。現代人に多く不眠の原因で一番多いといわれている。
  4. 精神的な病気
    精神的ストレスが大きくなり、うつ病などの精神疾患によるもの。うつ病と不眠は関係が深く、うつ病の症状の一つに不眠があげられる。心療内科などの専門医の治療を受けることが必要。
  5. 薬やアルコール
    薬の副作用やアルコール、カフェイン、タバコの摂取が原因によるもの。薬やアルコールは快眠にはいたらないが睡眠を誘発する場合もあり、慢性的になりやすいため悪循環となる。

メラトニンとセロトニンのバランスが不安定だと熟睡できない

メラトニンとセロトニンの分泌は陰陽の関係にあるので、どちらかが優位になっても本来の働きができません。最近は深夜まで起きている人が多くなっており、とくに、家に帰ってからパソコンやスマホでメールやゲームをしていると、光の情報が目から入り続けているので、体内時計の親時計である視交叉上核は、まだ寝る時間ではないと錯覚して、メラトニン分泌の指令をだせません。

。そうすると、さぁ寝ようかと思ってもなかなか寝つけないだけでなく、日中強烈な睡魔に襲われてしまいます。さらに慢性化すると、眠気だけではなく、頭痛、めまい、胃部不快感、下痢、便秘など社会生活に支障をきたすことが多くなります。
このような状態は、海外旅行に行っていないのに時差ボケになってしまうのと一緒のことです。毎日、地球の時間にからだを合わせることが健康的な生活の基本です。

セロトニン不足には「セロトアルファ」

自律神経に影響するセロトニン

自律神経というのは、交感神経と副交感神経の2つのバランスでなりたっていて、内臓や血管、呼吸などをコントロールしてからだのバランスを保つ役割の神経です。興奮すると血圧が上がるのも暑いときに汗をかくのも自律神経の働きです。

自律神経が不安定になってしまう病気を自律神経失調症といいますが、なりやすい体質というものがあります。

自律神経の2つの神経系のうち、交感神経は起きているときに優位になる神経で、とくに緊張状態のときにはかなり強くなります。一方、副交感神経はリラックスしているときや寝ているときに優位になる神経です。

自律神経というのは、外部からのなんらかの刺激によって、からだのバランスが崩れそうになったときに、からだの働きを正常に保つ働きがあります。セロトニンは、朝起きたときに交感神経の活動を活発にする働きがあります。夜になって、セロトニンの分泌が減り、メラトニンの分泌が増えると、リラックスの副交感神経が働きだすということになります。自律神経のバランスを崩す原因には、ストレスが大きく関わっています。

交感神経と副交感神経

副交感神経   交感神経
瞳孔縮小 瞳孔拡張
収縮 気管支 拡張
グリコーゲン合成 心臓 拍動促進
膵液分泌促進 膵臓 グリコーゲン分解
活動促進 活動抑制
降下 血圧 上昇