メラトニンは思春期以降減少してしまう

メラトニンは睡眠を誘発する引き金になるだけではなく、睡眠初期から朝起きるまでずっと分泌が継続しています。では、赤ちゃんはどうかといいますと、1歳くらいまではメラトニンの分泌はなく、お乳を飲んで寝るという睡眠のリズムしかありません。赤ちゃんの睡眠レベルはレム睡眠が主体になっていて、1歳を過ぎたころからメラトニンの分泌がはじまり、3歳から5歳くらいにメラトニンシャワーといって、分泌量が急激に増えます。
この頃から睡眠のリズムが大人と一緒になります。その後、17歳から18歳を境にしてメラトニンの分泌は減少していきます。さらに、高齢になるとメラトニンの量が少なくなるので、睡眠障害も起きやすくなります。このように思春期までメラトニンの分泌が多いというのは、からだの成長にメラトニンがかかわっているからです。

メラトニンというホルモンは夜、寝ている間につくられる

メラトニンの生成のメカニズムについてはわかりましたが、ではメラトニンが分泌されるのはどのような状況のときでしょうか。

朝起きて、眼から太陽の光が入ると、光の信号は視神経を通って視交叉上核にいき、松果体に届きます。目から入った光は「朝ですよ!」という信号をセロトニン神経に送ると、セロトニンが分泌されはじめます。

それから約12時間後、太陽が沈んで数時間すると「夜になったよ!」という信号が松果体に送られ、セロトニンの分泌が止まりメラトニンの分泌がはじまります。

つまり、太陽がでている日中にはセロトニンが活発で、太陽が沈んだ夜になるとメラトニンの分泌が盛んになるということです。とくに午前0時から2時頃にメラトニンの分泌量がピークに達します。この分泌のパターンは日本に住んでいる人でしたらだいたい同じ時刻になるため、規則正しい生活をしている場合、およそ同じ時間帯に目が覚めて同じ時刻に眠くなるというパターンが生まれます。

メラトニンがつくられるメカニズム

メラトニンは脳の中央一番奥深くにある豆粒ほどの於果体から分泌されるのですが、そのためにはセロトニンがないと分泌されません。セロトニンというのは、脳内の情報伝達物質でドーパミンやノルアドレナリンと同じ仲間です。

脳には、情報を伝えるためにたくさんの神経が張りめぐらされていて、その神経の先端からセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの化学物質を放出して、つぎの神経へ情報を伝達させています。セロトニンというのは、心とからだが元気になるのをつかさどっていて、精神のバランスをとる役割があります。したがって、セロトニンが不足すると、心のバランスが崩れ、表情が暗くなったり、うつ状態になったり、キレやすくなります。

セロトニンはあらゆる生物にあり、私たちの生命活動に不可欠な存在です1では、セロトニンは何からつくられるかといいますと、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンが原料になっています。ちなみに、ドーパミンとノルアドレナリンはフェニルアラニンという必須アミノ酸からつくられます。

必須アミノ酸というのはからだのなかでは合成できませんので、食べ物から摂らなければなりません。からだに入ったトリプトファンは、酵素の働きによって消化管と脳でセロトニンとしてつくられ、消化管でつくられたセロトニンは胃腸のぜん動運動を活発にさせる働きをし、脳神経でつくられるセロトニンは神経伝達物質として、心とからだを元気にするように働きます。

さらに、トリプトファンからセロトニンがつくられたあと、2種類の酵素が働いてメラトニンが合成されます。ここでもう一度整理しておきましょう。メラトニンが合成されるのは、トリプトファン→セロトニン→メラトニンの順番です。したがって、トリプトファンの摂取量が少ないとセロトニンが合成されないので、うつ傾向あるいはキレやすくなつたり、メラトニンが分泌されないので、よい眠りがとれません。